感染症内科とは

感染症内科は、ウイルス・細菌・真菌(カビ)・寄生虫などが原因となって起こる感染症の診断と治療を専門とする診療科です。発熱や咳、下痢、発疹などの症状が、どのような感染症によるものかを見極め、必要な検査や治療を行います。
かぜやインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、胃腸炎、尿路感染症、皮膚感染症など日常的に見られる疾患から、結核やHIV、輸入感染症のような特殊な感染症まで幅広く対応します。
また、免疫力が低下している方や持病のある方では、感染症が重症化しやすいため、専門的な知識に基づいた適切な診断と感染管理が重要です。

感染症内科でよく見られる
主な疾患

かぜ症候群とは

ウイルスによって鼻や喉の粘膜に炎症が起こる、最も一般的な感染症です。くしゃみ、鼻水、のどの痛み、咳、発熱などの症状がみられ、多くは数日〜1週間程度で自然に回復しますが、体力の低下や他の感染症と重なると長引くこともあります。

治療について

ウイルスが原因のため特効薬はなく、解熱剤や咳止めなどの対症療法が中心です。安静と十分な水分補給、栄養摂取を心がけ、症状が強い場合や長引く場合は医療機関を受診してください。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の感染症で、突然の高熱、全身の倦怠感、関節や筋肉の痛み、咳、のどの痛みなどの症状が現れます。毎年冬に流行し、高齢者や基礎疾患のある方では重症化することもあります。

治療について

発症から早い段階で抗インフルエンザ薬を使用することで、症状の緩和や回復期間の短縮が期待できます。安静と十分な水分補給も重要で、症状が強い場合や持病のある方は早めの受診をおすすめします。

新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症で、発熱、咳、のどの痛み、倦怠感、嗅覚・味覚の異常など多彩な症状がみられます。軽症から重症まで幅広く、基礎疾患を持つ方や高齢者では重症化するリスクが高まります。

治療について

軽症の場合は自宅での安静・経過観察が基本となりますが、症状が強い場合や肺炎を伴う場合には、抗ウイルス薬や酸素投与などの治療が行われます。体調の変化には十分注意し、早めの相談・受診を心がけましょう。

感染性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス、細菌性腸炎 など)

ノロウイルスやロタウイルス、細菌などによって引き起こされる胃腸の感染症です。主な症状は、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などで、冬季に流行しやすい傾向があります。乳幼児や高齢者では、脱水に注意が必要です。

治療について

ウイルス性の場合は自然回復が多く、水分・電解質の補給が最も重要です。細菌性が疑われる場合や症状が重い場合には、抗菌薬の投与を行うこともあります。症状に応じて適切な対処を行いますので、早めの受診をおすすめします。

肺炎(細菌性・ウイルス性・誤嚥性など)

細菌やウイルスの感染、あるいは食べ物や唾液が気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)などによって、肺に炎症が起きる病気です。咳、痰、発熱、息苦しさ、胸の痛みなどが主な症状で、高齢者や基礎疾患のある方では重症化することもあります。

治療について

原因に応じて抗菌薬や抗ウイルス薬を使用し、必要に応じて酸素吸入や点滴治療を行います。早期発見・早期治療が回復の鍵となるため、咳や発熱が続く場合は速やかにご相談ください。

尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)

尿道から侵入した細菌が膀胱や腎臓に感染することで起こる病気で、女性に多く見られます。排尿時の痛み、頻尿、残尿感、尿の濁り、発熱などが主な症状で、腎臓まで炎症が及ぶと腰痛や高熱を伴うこともあります。

治療について

抗菌薬による治療が基本で、症状に応じて内服または点滴を行います。早期に適切な治療を受ければ改善しますが、放置すると腎機能の低下などを招くことがあるため、気になる症状があれば早めの受診をおすすめします。

皮膚や軟部組織の感染症(蜂窩織炎、とびひ など)

細菌が皮膚やその下の組織に感染し、赤み、腫れ、痛み、熱感、膿の排出などの症状を引き起こす病気です。蜂窩織炎(ほうかしきえん)は皮膚の深い部分まで炎症が広がる疾患で、糖尿病や免疫力の低下した方では重症化することもあります。

治療について

抗菌薬の内服や外用が基本となり、症状が強い場合には点滴や入院が必要になることもあります。早期に治療を開始することで、炎症の拡大や合併症を防ぐことができます。

帯状疱疹・水痘(みずぼうそう)

どちらも水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こる感染症です。初めて感染した際は水痘(みずぼうそう)として発症し、治癒後もウイルスが体内に潜伏し続け、免疫力の低下などをきっかけに再活性化すると帯状疱疹を引き起こします。帯状疱疹では、皮膚に沿って痛みを伴う発疹が出現します。

治療について

抗ウイルス薬をできるだけ早期に使用することで、症状の軽減や神経痛などの後遺症を防ぐ効果が期待されます。帯状疱疹では痛みの管理も重要となります。

結核

結核菌によって引き起こされる感染症で、主に肺に感染します。咳や痰が長引く、微熱、体重減少、寝汗などの症状が現れるのが特徴です。近年は再び患者数が増加傾向にあり、注意が必要です。

治療について

複数の抗結核薬を組み合わせ、6か月以上にわたる継続的な内服治療が基本です。途中で治療を中断すると再発や薬剤耐性のリスクがあるため、医師の指導のもと、根気よく治療を続けることが大切です。

HIV感染症・エイズ

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染すると、体の免疫力が徐々に低下していきます。初期は無症状のことが多いですが、進行すると様々な感染症や悪性腫瘍を発症し、エイズ(後天性免疫不全症候群)と診断されます。

治療について

現在は抗HIV薬による治療が確立されており、ウイルスの増殖を抑えることで、長期的に健康を維持することが可能です。早期発見・早期治療により、日常生活に支障のない状態で過ごすことができます。

梅毒などの性感染症(STI)

梅毒トレポネーマという細菌によって起こる性感染症で、性行為などを通じて感染します。初期は性器や口唇などにしこりや潰瘍が現れますが、痛みが少なく気づかれにくいことがあります。進行すると発疹、リンパの腫れ、全身症状へと広がることもあります。

治療について

ペニシリン系の抗菌薬による治療が有効です。早期に治療を開始すれば完治が可能ですが、放置すると重篤な合併症を引き起こすことがあるため、定期的な検査と早期対応が大切です。

輸入感染症(マラリア、デング熱など:海外渡航歴がある場合)

海外渡航先で感染し、帰国後に発症する感染症の総称です。マラリアやデング熱、チフス、ジカ熱などが代表的で、発熱、頭痛、関節痛、発疹など多彩な症状が見られます。発症時期や症状は感染症の種類によって異なります。

治療について

原因となる病原体に応じて、抗マラリア薬や対症療法などを行います。発熱や体調不良がある場合は、海外渡航歴を医師に伝えることが重要です。早期診断と適切な治療が重症化の予防につながります。
海外渡航歴のある方が発症することのある感染症です。高熱や発疹、関節痛、貧血などがみられ、帰国後の体調不良は注意が必要です。